「広報をやりたい」の次に何をするか
「うちもそろそろ外に発信しないと」。社長や役員からこの一言が出たとき、多くの会社がつまずくのは「最初の一歩」だ。
SNSのアカウントを作る?プレスリリースを書く?動画を撮る?
どれも手段としては正しいが、順番を間違えると「開設したけど何も投稿していないSNS」「1本だけ出して止まったプレスリリース」が量産される。
広報をゼロから立ち上げる場合、以下の順番で進めると止まりにくい。
ステップ1:発信するネタを棚卸しする
広報の最初の仕事は「何を発信するか」を可視化すること。記事を書く前に、まずネタのストックを作る。
ヒアリングで引き出す項目
社長、営業、人事にそれぞれ30分ずつ話を聞くだけで、以下が出てくる。
| 聞く相手 | 引き出すネタ |
|---|---|
| 社長 | 創業の経緯、事業への想い、今年の重点施策 |
| 営業 | お客様に評価されているポイント、競合との違い |
| 人事 | 採用で伝えたいこと、社風のエピソード |
| 現場社員 | 仕事のやりがい、日常の業務風景 |
年間ネタマップにする
出てきたネタを月ごとに配置する。
| 月 | 発信候補 |
|---|---|
| 4月 | 新年度方針、新入社員紹介 |
| 6月 | 展示会出展レポート |
| 8月 | 導入事例(顧客の声) |
| 10月 | 社内イベントレポート |
| 12月 | 1年の振り返り、年末挨拶 |
「毎月何を出すか」の一覧があるだけで、「ネタがない」という状態は解消される。完璧な計画でなくていい、ざっくりした見通しがあるかどうかが分かれ目。
ステップ2:チャネルを1つだけ決める
広報を始めるとき、「Twitter(X)もInstagramもLinkedInもやらないと」と考えがちだが、最初は1つだけにする。
チャネル選定の基準
| 届けたい相手 | 推奨チャネル |
|---|---|
| 取引先・業界関係者 | LinkedIn or コーポレートサイト |
| 一般消費者 | Instagram or X |
| 採用候補者 | note or 採用サイト |
| メディア | プレスリリース配信(PR TIMES等) |
BtoB企業なら、まずはコーポレートサイトの情報量を増やすことから始めるのが最もリスクが低い。すでにあるサイトに「代表メッセージ」「社員紹介」「事業の詳細」を追加するだけで、外部からのリサーチに耐えられるようになる。
運用ルールを先に決める
アカウントを「開設」する前に、以下を決めておく。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 投稿頻度 | 週1回(曜日固定が続けやすい) |
| 担当者 | 1名(兼任で構わない) |
| 承認フロー | 下書き → 部長/社長確認 → 投稿 |
| NGルール | 競合への言及禁止、顧客名は許可なく出さない |
「毎日投稿」は続かない。週1回、曜日を決めて投稿する方が、兼任担当者の負荷に合っている。
ステップ3:写真素材を一括で撮っておく
広報の発信で最もボトルネックになるのが「使える写真がない」こと。
記事を書く気はあるのに、添える写真がないから出せない。この問題が地味に発信を止める。
半日かけて以下の写真を撮影しておくと、当面の発信で困らない。
- オフィスの業務風景(デスク、打ち合わせ、作業の様子)10カット
- 社員のポートレート(個人が特定できるもの。許可を取る)
- 製品・サービスのカット(実物、画面、成果物)5カット
- 社屋の外観(朝と夕方の2パターン)
撮影はプロに依頼するのがベストだが、予算がない場合はスマートフォンでも構わない。「撮ってある」と「撮っていない」の差は、カメラの性能差よりもはるかに大きい。
ステップ4:最初の1本を出す
何を最初の1本にするか
最初の発信は、社内のハードルが最も低いものにする。
| 難易度 | 内容 |
|---|---|
| ★☆☆ | 社員紹介記事(1名へのインタビュー。800字でいい) |
| ★☆☆ | イベントレポート(展示会やセミナーの参加報告) |
| ★★☆ | 代表メッセージ(方針や想いを語る記事) |
| ★★★ | プレスリリース(新サービス、新規事業の発表) |
プレスリリースは「ニュースバリューがあるか」を判断する必要があり、最初の1本としてはハードルが高い。まずは社員紹介やレポート記事から始めて、「出す」こと自体に慣れるのが先。
完璧を目指さない
最初の記事は500字でもいい。写真1枚+テキスト数段落で十分。大事なのは「出す」ことであって、「いい記事を出す」ことではない。
ステップ5:3カ月やってみてから振り返る
広報の効果は短期では測りにくい。最低3カ月は「決めた頻度で出し続ける」ことに集中する。
3カ月後に振り返るポイント:
- 発信は止まらずに続けられたか
- 社内から「こういうネタも出せないか」という声が出てきたか
- 採用や営業の場面で「サイトを見ました」と言われたか
- 担当者の業務負荷は許容範囲だったか
この振り返りの結果を見て、チャネルを増やすか、頻度を上げるか、動画やSNSに進むかを判断する。最初から全部やろうとすると、3カ月持たない。
まとめ
広報の立ち上げで最も重要なのは「完璧な体制を作ること」ではなく、「最小限の設計で、まず1本出すこと」。
順番を整理すると:
- ネタの棚卸し(何を発信できるか)
- チャネルを1つ決める(どこに出すか)
- 写真素材を撮っておく(使える画を確保)
- 最初の1本を出す(ハードルの低いものから)
- 3カ月続けて振り返る(効果測定して次の手を決める)
「いつか広報をやりたい」ではなく、この順番で進めれば、来月には最初の1本が出せる。