「いい感じで」は、制作会社を困らせる
映像制作を外注するとき、最もよくある依頼が「いい感じにお願いします」。気持ちはわかるが、これは制作会社にとって最も困る指示の一つ。
なぜなら、「いい感じ」は人によって違うから。発注者のイメージする「いい感じ」と制作会社が解釈する「いい感じ」が一致する保証はない。結果、仕上がりを見て「思っていたのと違う」が発生する。
これを防ぐには、発注前に最低限の情報を整理して伝えること。映像のプロでなくても、以下を整理すれば伝わる。
伝えるべき5つの項目
1. 目的(何のために作るか)
| 質問 | 回答例 |
|---|---|
| この動画は何のために作る? | 採用説明会で流す / 営業資料として使う |
| 見た人にどうなってほしい? | 「応募したい」と思ってほしい / 「話を聞きたい」と思ってほしい |
目的が定まると、構成・トーン・尺がほぼ自動的に決まる。目的がないまま作り始めると、「なんとなくきれいだけど何に使うかわからない映像」ができる。
2. ターゲット(誰に見せるか)
「全員に見せたい」は誰にも刺さらない。ターゲットを1つに絞る。
| ターゲット | 映像のトーン |
|---|---|
| 新卒学生 | カジュアル、テンポ速い、社員の素の表情 |
| 経営層 | 落ち着いた、データ重視、代表の言葉 |
| 既存顧客 | 実績ベース、具体的な事例 |
3. 参考映像(イメージの共有)
言葉で伝えるよりも、参考映像を3本見せる方が正確に伝わる。
YouTubeや他社のWebサイトから、「こういう雰囲気がいい」と思う映像を3本ピックアップする。その際、以下を伝えると精度が上がる。
- 「この動画のテンポ感が好き」
- 「この動画の色味がイメージに近い」
- 「この動画の構成(インタビュー→Bロール→ナレーション)を参考にしたい」
「この動画みたいにして」だけだと、何を参考にすればいいかわからない。「何が気に入っているか」を言語化することが重要。
4. 素材と制約(使えるもの・使えないもの)
| 項目 | 伝えること |
|---|---|
| 撮影可能な場所 | オフィス内OK / 工場はNG / 屋外ロケ可能 |
| 出演者 | 社長が出る / 社員3名が協力可能 / 顔出しNGの人がいる |
| 既存素材 | 過去の写真あり / ロゴデータあり / BGM指定あり |
| NGワード | 競合名は出さない / 具体的な数字は未確定 |
| 納期 | 〇月〇日の説明会で使う(逆算してスケジュール) |
5. 予算感(ざっくりでいい)
「いくらかかりますか?」と聞く前に、「このぐらいの予算感です」と先に伝える方が、現実的な提案が返ってくる。
予算を伝えないと、制作会社は「念のため全部入りの見積り」を出す。結果、高額な提案になり、「やっぱりやめます」になることが多い。
やりがちな失敗パターン
失敗1:社内で合意を取らずに発注する
発注者が1人で制作会社とやりとりし、完成品を社内に見せたら「こういうのじゃない」と言われるパターン。
対策: 参考映像の段階で、社内の関係者(上司、広報、出演者)にも見せて合意を取る。
失敗2:修正回数が無限に増える
完成間近になって「やっぱり最初から変えたい」が出るパターン。制作費が膨らむ原因の大半がこれ。
対策: 制作フローを「企画構成→撮影→初稿→修正→納品」の段階に分け、各段階で承認を取ってから次に進む。前の段階に戻る場合は追加費用が発生することを事前に合意しておく。
失敗3:完成品のイメージを言葉だけで伝える
「爽やかで、でもプロフェッショナルで、かつ親しみやすい感じ」。これで制作会社が正確にイメージを掴めることは、ほぼない。
対策: 参考映像を必ず添える。言葉は補足。
制作会社に送る依頼テンプレート
以下をコピーして埋めるだけで、最低限の情報は伝わる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 動画の目的 | (例:採用説明会で流す) |
| ターゲット | (例:25卒の新卒学生) |
| 希望する尺 | (例:3分程度) |
| 参考映像 | (URLを3本) |
| 参考映像の好きなポイント | (テンポ / 色味 / 構成 etc.) |
| 撮影可能な場所 | (例:本社オフィス、屋外NG) |
| 出演者 | (例:代表+社員2名) |
| 使える素材 | (例:ロゴ、過去の写真) |
| NG事項 | (例:競合名は出さない) |
| 納期 | (例:6月15日の説明会で使用) |
| 予算感 | (例:50万円前後) |
まとめ
映像制作を外注するときに大事なのは「映像の知識」ではなく、「自分たちが何を求めているかを言葉にすること」。
- 目的とターゲットを1つに絞る
- 参考映像を3本添える(何が好きかも伝える)
- 素材と制約を正直に共有する
- 予算感を先に伝える
- 各段階で社内承認を取る
これだけで、「思っていたのと違う」は大幅に減る。