記事はA社、動画はB社、Webサイトの更新はC社、撮影はD社──。広報や制作に関わる発注先が分散しすぎて、社内の調整コストだけでかなりの時間を使っている。
こうした状態に陥っている企業は少なくありません。各社の得意分野を活かすために分けているはずが、情報の伝達ロスと調整の手間が、分散のメリットを上回ってしまっていることがあります。
この記事では、発注先が分かれすぎている場合の具体的な問題と、一本化する際の判断基準を整理します。
発注先が分散することで起きる具体的な問題
1. 同じ説明を複数の会社にしなければならない
会社の事業説明、今回の制作の背景、ターゲット、トーン──これを発注先ごとに一から説明する必要があります。
しかも、各社が受け取った情報が微妙にずれていると、記事のトーンと動画のトーンが合わない、Webの導線と制作物が接続されていない、といった問題が生じます。
2. 素材が使い回せない
A社が撮った写真をB社の記事で使いたいのに、権利の帰属や納品形式の問題で使えない。C社に納品してもらったWebバナーのデザインデータを、D社に渡そうとしたらファイル形式が合わない。
発注先が増えるほど、素材の互換性の問題が増えます。
3. 制作物のトーンがばらばらになる
会社紹介動画は落ち着いたトーン、採用記事は明るいトーン、Webサイトはまた違うデザイン──。それぞれの発注先が独自に「いいもの」を作ろうとするため、全体として見たときの統一感がなくなる。
4. 社内の窓口担当者が疲弊する
複数の制作会社との打ち合わせ、スケジュール管理、確認依頼の窓口をすべて1人で回している場合、その人が忙しくなるかいなくなると、広報全体が止まります。
いつ一本化すべきか──判断のチェックリスト
すべての発注を1社にまとめることが常に正解とは限りません。以下のチェックリストで判断します。
一本化を検討すべきサイン:
- 3社以上の制作会社に個別に発注している
- 同じ内容の説明を複数の会社に繰り返している
- 制作物間(記事、動画、Web、写真)のトーンが統一されていない
- 社内の窓口担当者の調整工数が、制作そのものの工数を上回っている
- 素材の使い回しがうまくいかない(権利・形式の問題)
- 「全体を見てくれる人がいない」と感じている
3つ以上当てはまる場合: 発注先の整理を検討する価値があります。
個別発注を維持してよいケース:
- 各社が完全に独立した案件を担当している(相互連携の必要がない)
- 特定の分野で明確に優れた専門性がある(例: 高度な映像制作、特殊な印刷)
- すでに社内で各社の窓口管理が仕組み化されている
一本化するとどう変わるか
| 項目 | 分散発注 | 一本化 |
|---|---|---|
| 情報伝達 | 各社に個別に説明 | 1回の共有で済む |
| トーンの統一 | 意識しないと合わない | 同じチームが見るので自然に統一 |
| 素材の使い回し | 権利・形式の問題が出やすい | 全素材を横断的に使える |
| スケジュール管理 | 各社の進行を個別に追う | 1つのプロジェクトとして管理 |
| 窓口の負荷 | 打ち合わせが週に複数回 | 定例1回+必要に応じて随時 |
| コスト | 各社の最低ロットが積み重なる | パッケージで組めるので柔軟 |
一本化する際のポイント
発注先を整理するときに注意すべきことがいくつかあります。
1. 「全部できます」には注意
「記事も動画もWebも全部やります」と言う会社のうち、本当に全部を高い水準でカバーできる会社は少ない。確認すべきは以下:
- 自社で制作するのか、外部パートナーに再委託するのか
- 各領域の実績を個別に見せてもらえるか
- 窓口担当者と実作業担当者が近いか(伝言ゲームにならないか)
2. 企画と制作が分離していないことが重要
発注先を一本化する最大のメリットは、「何を作るか」の判断と「どう作るか」の実作業が分離しないことです。企画だけコンサル会社、制作だけ制作会社、という分け方では一本化の意味がありません。
3. まず1案件で試す
いきなり全案件を移管するのではなく、まず1案件をまとめて依頼してみて、進め方や品質を確認する。そこで「この相手なら任せられる」と判断できたら、段階的に移管する。