「いい感じの動画を作って」からは、いい動画は生まれない
会社紹介動画の制作で最も多い失敗パターンは、「なんとなくかっこいい動画」を目指して、結果として何も伝わらない映像ができてしまうこと。
原因はほぼ共通している。誰に、何を、どう伝えたいかが整理されていないまま撮影に入ってしまうことだ。
この記事では、「発注前に何を整理すべきか」を具体的にまとめる。
最初に決める3つの要素
1. この動画を見せる相手は誰か
「会社紹介動画」という名前は同じでも、用途によって設計がまったく変わる。
| 用途 | ターゲット | 求められるトーン |
|---|---|---|
| 採用説明会で流す | 新卒・中途候補者 | 社風や人の雰囲気が伝わる |
| 営業資料として使う | 見込み顧客・取引先 | 事業内容と実績が端的にわかる |
| 展示会ブースで流す | 来場者(不特定多数) | 短く、目を引く。音がなくても伝わる |
| 株主向け | 株主・投資家 | 経営方針と事業の全体像 |
まず「この動画はどこで、誰に見せるか」を1つに絞る。複数の用途を欲張ると、どの層にも刺さらない動画になる。
2. 伝えたいことを3つに絞る
5分の動画で伝えられるメッセージは、多くて3つ。以下のフレームで整理すると判断しやすい。
A:何をやっている会社か(事業の説明)
製品・サービスの概要。業界や顧客層。
B:なぜそれをやっているか(理念・ストーリー)
創業の経緯、代表の想い、社会的な使命。
C:他社とどう違うか(強み・差別化)
技術力、対応範囲、実績、人材の質。
3つのうちどれを軸にするかで、映像の構成がまったく変わる。
3. 尺を決める
| 用途 | 推奨尺 |
|---|---|
| 営業資料・説明会 | 3〜5分 |
| 展示会ブース | 1〜2分 |
| Web掲載 | 2〜3分 |
| SNS用ダイジェスト | 30秒〜1分 |
「長ければ丁寧」ではない。視聴者の集中力は90秒を過ぎると急激に落ちる。5分を超える動画は、よほど強い動機がない限り最後まで見てもらえない。
映像構成の基本型
会社紹介動画の構成には、いくつかの型がある。
型1:ナレーション+Bロール型
ナレーション(声の語り)を軸にして、映像は社内風景・作業風景・製品のカットを重ねる。最もオーソドックスな構成。
メリット: 情報量が多い。短い尺で多くを伝えられる。 デメリット: 人の顔が出ないと温度感が伝わりにくい。
型2:インタビュー型
代表や社員へのインタビューを軸にして、話の内容に合わせてBロール(補足映像)を挿入する。
メリット: 人の言葉で語られるため、信頼感がある。採用動画に強い。 デメリット: 話者の印象に依存する。話が長くなりやすい。
型3:ストーリー型
1つのプロジェクトや1日の業務を追いかけるドキュメンタリー形式。
メリット: 没入感が高い。ブランディング効果が大きい。 デメリット: 制作コスト・日数が多い。
多くの企業紹介動画は型1と型2のハイブリッドで構成される。ナレーションで会社の概要を説明しつつ、要所で代表や社員のコメントを入れる形式だ。
撮影で必要な素材リスト
台本が決まったら、撮影日に押さえるべき素材を整理する。
必須素材
- 外観ショット:社屋やオフィスビルの外観。看板・エントランスを含む
- オフィス内観:実際の業務風景、打ち合わせ、作業の様子
- 人物ショット(Bロール):社員が働いている様子。顔出しの許可を事前に取る
- 製品・サービスのカット:実物、画面、成果物
あると強い素材
- 代表インタビュー:経営への想い、創業ストーリー
- 社員インタビュー:仕事のやりがい、社風の伝え方
- 顧客の声(許可が取れる場合):第三者の評価
- 数字・実績のグラフィック:データをモーショングラフィックスで見せる
撮影日の注意点
- 撮影日にオフィスが「いつも通り」であること(大掃除した直後ではなく、普段の雰囲気)
- 自然光が入る時間帯に撮ること(午前中~14時がベスト)
- BGMは撮影時には流さない(後から編集で入れる)
- エアコンの音など環境音に注意する(インタビュー時はエアコンを止める)
台本への落とし方
映像構成と素材が決まったら、台本(構成表)にまとめる。
| パート | 尺 | 映像 | 音声 | テロップ |
|---|---|---|---|---|
| オープニング | 15秒 | ドローン or 外観ショット | BGM | 社名ロゴ |
| 事業紹介 | 60秒 | 業務風景Bロール | ナレーション | キーワード・数字 |
| 代表メッセージ | 45秒 | 代表インタビュー | インタビュー音声 | 名前・肩書き |
| 強み・差別化 | 60秒 | 製品カット + モーションGFX | ナレーション | 3つの強み |
| 社員紹介 | 45秒 | 社員インタビュー×2名 | インタビュー音声 | 名前・部署 |
| エンディング | 15秒 | オフィス全景 | BGM | URL・連絡先 |
合計4分。この構成表があれば、制作会社との打ち合わせが一度で済む。
まとめ
会社紹介動画で最も重要なのは、撮影でも編集でもなく、撮影前の設計。以下をまず社内で整理してから制作会社に相談すると、見積りの精度も仕上がりの満足度もまったく違う。
- 誰に見せる動画か(用途を1つに絞る)
- 何を伝えたいか(3つに絞る)
- どの構成型を使うか(ナレーション型 / インタビュー型 / ストーリー型)
- 尺をいくつにするか
- 撮影日に何を撮るか(素材リストの作成)
「かっこいい動画」ではなく「目的に合った動画」を作ること。それが結果として、かっこいい動画になる。